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2011年:前肢を保存した状態で腫瘤切除を行った犬の1例 (第20回 中部小動物臨床研究発表会)

〈要約〉
 12才令のパグが左上腕外側にできた腫瘤が自潰したとのことで来院。腫瘤は肘に達していたため肩甲部よりの断脚をすすめたが、オーナーの希望により前肢を保存し腫瘤部の切除を行った。切除には超音波凝固切開装置を多用した。結果、広範囲にわたる皮膚切除となり、縫合部が一部壊死、離解したが、創傷被覆材を用いることにより離解部は順調に治癒した。

Key words:犬、創傷管理、超音波凝固切開装置

 軟部組織肉腫(以下:STS)等の腫瘍が四肢に発生した場合、切除マージンを考慮に入れると肢の保存が困難なことがある。特にSTSであれば、再発を繰り返す度に増殖速度の増加などの臨床的な悪性化が見られることがあるため、切除マージンの問題も含め断脚が適応となる。しかしながら、オーナーにとっては断脚という結果は受け容れ難く、肢を保存した状態での切除を希望される場合がある。 今回、外観上の侵襲度から前肢を保存することが困難と思われた腫瘤に対し、オーナーの意向により前肢を保存する形で腫瘤の切除を行った。超音波凝固切開装置(オリンパスメディカルシステムズ株式会社SonoSurg:以下SonoSurg)を用いることによって比較的少ない出血で手術を終えることができたが、術創は広範囲となり可動域を含む皮膚縫合部にはかなりのテンションがかかった。結果として一部皮膚が離解したが、創傷被覆材を用いることにより、良好に治癒した。